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2011年2月の1件の記事

NHK ニュース深読み 平成の開国?TPPってアリですか?(1/22放送分)

番組ではTPP賛成派と反対派,両方の言い分を比較していた.短い放送時間で上手く纏めていたのはNHKらしい.
番組を見た感想としては「現時点でTPPを導入すべきではない」と思った.
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反対派の慶應義塾大学教授 金子勝氏の言うことはスジが通っていた.
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その反面,賛成派の早稲田大学教授 寺田貴氏の発言に何度も出てくる「~なるんじゃないか?」みたいな言い回しに「こんな賛成派で大丈夫か?」という疑いが消えなかった.
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こういう何の根拠もなく良くなるんじゃないか?なんて言っている人を見てると
↓このAAを思い出す.
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まず賛成派の理由として,韓国がEUや米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいることを挙げている.それにより韓国から米国,EUへ輸出する際の自動車関税が無くなったことを理由としていた.だから関税を無くすためにTPPを導入すべきだと.
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この意見で疑問なのは,
Q1.韓国車の関税が0%なのは韓国車の品質が低く,欧州車の敵ではないから.競争力がある日本車は脅威なので関税を掛けて当たり前,という説明をしないのはなぜか?(注1)
Q2.自動車や薄型テレビといった特定品目の関税を下げたいならFTAで可能なのに,なぜ広範囲なTPPでなければならないのかが明示されていない.

Q1.Q2.について,金子氏は韓国が結んでいるのは自由貿易協定(FTA)であること,民主党内でもTPPをやるか個別のFTAで進めるか意見が分かれていると指摘していた.寺田氏はこれに対しTPPでなければならない理由を示すことができなかった.
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反対派の意見として農業が注目されがちだが,金子氏は「関税はTPP24分野のうちの3分野にすぎず,実はこの24分野がTPPの本質なのだ」と指摘していた.(注2)

↓TPP24分野の一覧表
TPP24分野の一覧表
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反対派の意見として,TPPに参加すると日本に不利益がある分野は農業以外にもある,その例として挙げていたのは,
1.郵便貯金や簡易保険を解放して,米国企業が参入しやすくなるようにしろ
2.BSEのため輸入規制している米国の牛肉を全部ノーチェックで買え
3.健康保険を解放して民間保険会社を参入させよ
4.外国人労働者を受け入れろ(注3)
5.公共事業の入札基準を引き下げろ
6.日本の自動車の安全基準が高すぎるので,米国車並に安全基準を引き下げろ
というもの.(「公共事業~」は解放しても良いかもしれないけど)TPP参加は関税,農業以外の分野も外国企業に有利になるよう解放されるため,日本にとって不利益が多い.

4.について桂文珍氏は,「就職氷河期なのに」と外国人労働者を受け入れるのは問題だとの不快感を示した.
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民主党と一緒に日本経団連がTPPや移民政策を進めようとしているのも安い外国人労働者を使いたいという理由であり,表向き関税の問題にすり替えているにすぎない(注4).広告収入に頼っているマスコミでは「関税の問題だけなら自由貿易協定で十分」という指摘はできない.そこをNHKが指摘してくれることを期待していたが,それは無理な話だったか.
やはり,こういう批判はネットでしかできない.

オバマ大統領の一般教書演説で国家輸出計画について金子氏の発言.
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「5年間で輸出を倍増して200万人の雇用を作り出すという.(米国は)他にもう手段がないんですよ.議会が負けちゃったから.だから輸出をガリガリやっていく.そうすると,当然のことながら輸出を伸ばしたい.日本の市場に入るため,いろんな要求を突きつけてくることは確かなんです.(TPPに)入ってみなきゃ分かんないっていうのは拙いんで,じゃ,何が問題になるんですか?というのを,あらかじめ分かった上で,交渉に入るなら入るで,国民が合意して入るならばいいんだけれども,(TPPのこと)分からないで,とにかく入っちゃえと言うのは危ないことだ.それからカナダが乳製品をやっぱり例外にしてほしいっていうので,(TPPに)入ろうとしたんですけど,やっぱり最初から例外って言うと入れてくれないわけですよ.それで実は,アメリカはもう既にオーストラリアとの関係ではそういう協定がいってあるので,それを自主的にして,ごりごりやっていくことはできても,あとから入ってくる奴にはそういうのを認めないよっていう雰囲気が漂っているので,ちゃんと(TPPにおいて)何が問題になって,それがどの程度アメリカ側の強い要求なんですか,というのを確定して入らないととても危険.」
反対派の意見は,だいたいこの意見に集約されている.


番組後半で個別に農業問題について取り上げた.
まず反対派の意見として「日本の農業も効率化や規模拡大でコストを下げるべきだ,という意見があるが,日本の農家が努力してもとても無理だ」という意見が出された.理由は日本の農家一戸あたりの農地面積が1.9ヘクタール,米国は同200ヘクタール,オーストラリアは同3000ヘクタールと規模が違いすぎるから.これではコスト的に太刀打ちできない.
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金子氏は日本の農産品を中国に輸出することを提案しているが,どこまで買ってくれるかなあ?というのが個人的な感想.日本の農産品をブランド化して輸出という案を出している人もいるけど,実際のところ,ブランド化できた農産品なんて全体の何割あるんだよ?と言いたい.銘柄や産地で高く売れる商品なんてごく一部でしょうに.

賛成派の寺田氏は「食料品が高騰してもTPP参加国なら優先的に回してもらえるかもしれないから安心」という意見を出した.
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これは見ていて変だな,という感想を持ったが,やはり出演者も同じ印象だったようで.桂文珍氏は「最終的には自分(自国)が一番かわいいでしょうからね,それを決めてても変えていくんじゃないですか.」と食糧難になれば食料輸出国が輸出を制限してくる筈とツッコミを入れていた.そりゃあそうだ.自国民を飢えさせても食料を輸出しようなんて国があったら,政府に対して暴動が起きますよ.
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それに続けてNHK解説委員 合瀬宏毅氏も「国同士で約束しても,結局民間ベースですから,より高いところがあれば,高く買ってくれるところがあればそっちに行くんですね.」と,メキシコでのトウモロコシ暴騰の例を挙げて寺田氏にツッコミを入れていた.

国防上,食料自給率を維持しておくのは当たり前のことだけど,そこら辺のところ寺田氏は分かってなさそう.食料が無くなったら貧困層から政府に対して暴動が起きますよ.政権の安定運営を図るなら食糧の安定供給もちゃんとやっておかないと.

食糧自給率について寺田氏は「日本ではカロリーベースで食糧自給率を計算しているが,世界的には金額ベースで計算している.前者なら40%と低めに出るが,後者なら70%と出る.自給率的にはそんなに低くない.」と発言.これに対して合瀬氏が「金額ベースは分かりますけども,我々,金額で食っているわけでない,やっぱり量で食ってますからカロリーで計算しないと.」と発言.桂文珍氏は「私は安心と安全で食べたいけどね.」と少し斜め上をいく発言.
自給率の算出方法は,どれが正解なのか正直疑問だ.もっと議論が必要と思う.

(注1)
フジテレビ系の「教えてMr.ニュース 池上彰のそうなんだニッポン(1/21放送分)」で日本車と韓国車のシェアの伸び率を示している.なお,これは伸び率であり、市場占有率のグラフが示されていないことに注意したい.
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それに続けて韓国がTPPに参加しておらず,FTAで関税を無くしていることを問題提起している.
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ただ,この番組では「それ(関税撤廃)をいっぺんにやってしまいましょうというのがTPP」という雑な説明で終わっていた.
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(注2)
この24分野を紹介した番組は「ニュース深読み」だけだった.
例えば,フジテレビ系の「教えてMr.ニュース 池上彰のそうなんだニッポン(1/21放送分)」でTPPを取り上げていたが,取り上げたのは自動車の関税と農業問題だけだった.この番組はいつも芸人が騒ぐだけで,ニュースに対する掘り下げが浅いから仕方ないが.
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ただ,この番組は緊急生放送だと内容が濃くなるので,編集段階で池上彰氏の面白い講義をカットしているとも一部で言われている.

それから「そこまで言って委員会(1/30放送分)」で,宮崎哲弥氏が「TPPってのは関税協定ですよ.」と発言したのを辛坊治郎氏が「TPPってのは人もサービスも全部包括的に自由化しましょうっていう協定だから」と訂正していた.一般人より勉強している宮崎氏でさえ,TPPの認識はこの程度だった.
ほとんどの国民は,この宮崎氏のように「TPP=関税協定」だと勘違いしてるよ.
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(注3)
外国人労働者を上手く利用している国(ドバイ方式)があることも紹介しておきたい.

> ドバイ方式(移民・労働者確保政策)
>
> ■仕事のない外国人は強制退去
> ドバイでは、仕事のない外国人の滞在が認められていない。
> 会社を退職したり、解雇された場合は一ヶ月以内に退去しなければならない。
>
> ■帰化させない
> 外国人が帰化するのは難しく、ドバイ男性と結婚したとしても国籍を
> 得るためには数年待たなければならない。
> これでフランス・オランダのような移民によるトラブルは起きない。
>
> ■政治参加させない (参政権を与えてなならない)
>
> ※ドバイでは労働者が不足すれば期間労働者として受け入れるが、移民させない

他に「犯罪を犯した在留外国人は強制的に帰国させ,再入国させない.」,「日本国内で在留外国人が職を失い生活に困窮することになったら,当該外国人は帰国するなり出身国(国籍を持つ国)が保護すべきである.日本が在留外国人のことまで責任を負う理由がない.」といった意見も聞かれる.後者はドバイ方式なら起こらない問題だ.

引用元:痛いニュース(ノ∀`) : 「日本に、もっと移民を!」 日本の政治家や学者ら、異例の大キャンペーン…結婚せず子供作らず減る一方の日本人に警鐘 - ライブドアブログ


(注4)
日本経団連が進めている移民政策はオランダ,ドイツで失敗しているが,「日本を壊してでも金儲けしたい」という潔さは認めてやってもいいと思う.
移民失敗例:YouTube - ドイツでも移民問題(オランダの悲劇も見てね)
移民失敗例:YouTube - オランダの悲劇―多文化共生がもたらしたもの

福祉のために移民を受け入れようという動きもあるが,その移民が年老いたら福祉は「日本の税金」によって賄われることに注意したい.欧州の移民政策はそれでも失敗している.その点でドバイ方式は優れているといえよう.

移民政策が進んでいないのに既に居付いてしまっている外国人の犯罪については外国人犯罪 - Wikipediaを参照したい.

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