満州事変の柳条湖事件を描いたものだけど,放送を取りやめるほどの内容でなかった気がする.
以下に挙げたラジオ放送と満州日報記者の発言がテレビ局の癇に障って放送中止になったと推測します(個人的な推測ですが).
テレビ局が気にしたであろう3点は以下のとおり.
(1)ラジオ放送で帝国大学教授カンバヤシコウサクが遼東半島の租借権の説明中に,
政友会ハラヒデヒロ衆議院議員「まあ,99年という区切りは実質,永久と言い換えてもかまわない.ある種,建前の話でありまして...」
民政党イクシママサユキ衆議院議員「いや,それは少々不穏当な発言だ.元々,1923年に切れる租借権を21ヶ条要求で99年間に延長したことが今のような反日の気運を生み出した要因の一つであることは事実ですからな.」
カンバヤシコウサク「はあ,そこにつきましては議論の余地があると思うのですが...話を戻しまして...」
のやりとりで「永久に借り受ける=日本の領土とする」という領土問題に関する解釈が在日外国人が持っている反日感情を刺激しかねないと判断されたか?
# ここに出た3人はキャストに役名が無かったから誰かが2役で演じたのか?
(2)満鉄奉天公所職員が「満鉄に並行に走る路線を敷いてはならない!張学良政権はその条約を全く無視してこちらの営業を妨害してるわけですよ!」と反日的な張学良を批判するシーン.それに続けて飲食店で満州日報記者が食事中,ラジオから「そもそも満州の軍閥,張作霖が比較的日本に融和的であったのに対し,その跡目を継いだ息子の張学良が妙に反日意識が強い.それこそが今の満州の混乱のおおもとであることは論を俟たない」と流れてくるシーン.
張学良は中国で英雄扱いされているので,張学良への批判的な台詞に中国からクレームがつくのを恐れた「外交上の配慮」というところか? とはいえ,直後の満州日報記者の「そりゃ,親父が謀殺されりゃあ息子としては黙っちゃいられないだろう.もう3年になるか.張作霖の乗る列車を爆破させたのは蒋介石側の工作員だと俺たちは報じた.けどな,あの一件が日本側の謀略だって噂は相当信憑性が高いだろ.徐々に日本に従わなくなってきた張作霖を国民党が謀殺させたように見せかけ,それを口実に関東軍が出兵し,満州一帯の制圧を図る」という台詞から張学良が反日になるのもやむなしの解釈を出しているよね.
(3)柳条湖事件直後の満州日報内のシーン.「柳条湖で満鉄線が爆破された.全員を招集してくれ.」「中国軍の仕業ですか?」「そう言ってきたよ.電話では.だが,誰がそれを鵜呑みに出来る?!」
それと「鳴海!遅いぞ!出来るだけ現場に近づこうぜ!中国軍の犯行だってことを煽るんだ!」「もし,中国軍じゃなければ?」「なあ,そんな記事,誰が読みたい?」
この後者の「中国悪し」前提の報道姿勢が一番テレビ局の癇に障ったと思います.テレビや新聞等のオールドメディアは視聴者,読者の望むものを提供する.それが人目を引くものなら内容が事実か否かはどうでもいいというスタンスです.ネットを常用する人はテレビや新聞の偏向報道に気付いていますが,当のテレビ局が番組内でそれを白状するのは「それを言っちゃあおしまいよ」的なところはあるでしょう.特に在京キー局はね.
本編は石原莞爾(cv.磯部勉)の「満蒙問題私見」から始まる.その石原莞爾率いる関東軍の引き留め役で奉天に派遣された帝国陸軍少将建川美次(cv.土師孝也)を描いていた.それらに預言者(cv.川澄綾子)を絡めることで「閃光のナイトレイド」のストーリーに満州事変を組み入れている.
現代史は学校でもちゃんと習えなかった世代なので,今回はWikipediaを引きながら視聴しましたよ.
それにしても,テレビ版特別編「預言」内で7話ネット配信の告知無しってテレビ局も神経質になりすぎ.EDで柳条湖事件の説明を少し入れたくらいだ.ここがテレビで放送できるギリギリの線てところか.