各所で「はしょった」部分が残念な作品でした.後半の花寺学院の学園祭は,あらすじ紹介に近い感じです.おかげでパンダと小笠原祥子(cv.伊藤美紀)の再開シーンがかなり薄味になりました.
細川可南子(cv.小清水亜美)の声はキャラのイメージどおりですね.1年生なのに福沢祐巳(cv.植田佳奈)よりしっとりとした大人っぽい雰囲気を持っている.小説「フレーム オブ マインド」の166頁でも,福沢祐巳が細川可南子に「もしかして三年生ですか」と問いかけるシーンがあるけど,確かにこの風貌と落ち着きようなら3年生と勘違いしてもおかしくない.
冒頭,薔薇の館から帰る細川可南子を福沢祐巳が2階の窓から見ていて,細川可南子が振り返った際に福沢祐巳が隠れようとします.このシーンは何度観ても違和感が残りますね.福沢祐巳が細川可南子に対する戸惑いを持っていても,こういう行動は取らないと思うのですよ.福沢祐巳なら,ぎこちなく微笑んで軽く手を挙げるくらいはするでしょう.
ミルクホールの造りはイメージと大きく違いましたね.アニメ内のパン売り場だと雨の日は困るでしょうに.わたしは,屋根付きの渡り廊下の先に食堂のような広い建屋があり,その一角に折り畳みの会議机を二つほど並べて,そこにパン業者の持ってきたプラケースを置いてある,というイメージを持っていたのですけど.「ホール」なんて名前だから,食堂のような広い場所に,自販機で買った飲料を飲むための4人がけテーブルが並んだ風景をイメージしたんですけどね.
ここのミルクホール手前での松平瞳子(cv.釘宮理恵)の中の人の演技は良かった.喋り方から毒気が抜けていて,福沢祐巳に対する好意はあるのにツンデレな態度をとってしまう内面をきっちり演じています.ええ,作画も良かったですよ.この作画の表情があってこそ,この声が映えますから.まあ,現時点で小説「あなたを探しに」を読んでいますから,松平瞳子の心情を理解してるゆえに贔屓目に観ているところもあるかもしれませんが.
「瞳子ちゃん.」
「ん?祐巳さま.」
「一人?」
「一人じゃ悪いですか?祐巳さまこそ,お連れがいらっしゃるようには見えませんけれど?」
「うん.うちのお母さんがご飯炊き忘れて,お弁当はおかずオンリーでパンを買いに来たの.」
「別にそんなこと聞いてません.」(←ここの語尾の喋り方がたまらんねえ)
「そお?いつもお弁当オンリーの祐巳さまが,どうしてミルクホールへ?なんて思ってたんじゃないの?」
「うぬぼれが強すぎますね.世の中,そんなにも祐巳さまに注目してはいませんわ.では,さようなら.」
「と,瞳子ちゃんたら冷たいのねェ.祐巳さびしいわ.」
「やめて下さいよ!」
「薔薇の館にもめっきり遊びに来なくなったじゃない?」
「部活動で忙しいんですの.それによくない気がこもってるから.」
「たまには遊びにおいでよ.祥子さまも喜ぶよ.私がうっとおしいんだったら,いない時を見計らって...」
「私がいやな相手は祐巳さまじゃありません!」(←ここのちょっと赤くなって困惑した感じの表情もイイ)
「細川可南子.わたくしは彼女のことが好きになれません.」
「瞳子ちゃん...」
「祐巳さま.急がないとパンが売切れてしまいますわよ.」